1956年、アメリカから戻ったサルバドール・ダリは、「老いたる近代芸術のコキュたち」を出版する。
ダリは本書に幾つかの論評をのせ、他の論評のかたわら、自分の芸術思想を展開し、敵を激しく攻撃している。最初の方で、ダリは現代芸術における唯一の価値ある経験は、物質の不連続性という観念から生まれると主張している。ダリは次のように書いている。「芸術史上初めての、この物質の不連続論はフェルメールのタッチやベラスケス風の筆致により告げられている。」
「私はこの意見発表をパリでおこなわんと欲するものであります。なぜならばフランスこそは世界でもっとも知性に富み、もっとも合理的な国であるのに対して、サルヴァドール・ダリ、この私こそは世界でもっとも非合理的で、もっとも神秘的な国からやってきた人間だからであります。」
「知性はわれわれを懐疑の霧にみちびくのが落ちであり、その結果は、美食的な、超ジェラチン的な、プルースト的な、爛熟した、あやふやなものの諸要因にわれわれを追い込むだけだということは周知の事実であります。このような理由によって、ピカソや私ごときスペイン人が時折パリにあらわれて、生ま生ましい血の噴きでるような大真理の塊りを諸君の眼前に置いて、諸君を幻惑することは、大いに好もしいことであり、また必要なことでもあります。」
■参考文献
『異説・近代藝術論』瀧口修造訳、紀伊國屋書店、1958(新装版、2006)
IL A ÉTÉ TIRÉ
DE CET OUVRAGE, SUR PAPIER DU MARAIS CRÈVECŒUR,
50 EXEMPLAIRES NUMÉROTÉS DE 1 A 50 ET
10 EXEMPLAIRES HORS COMMERCE, NUMÉROTÉS
DE I A X.
IL A ÉTÉ TIRÉ, EN OUTRE, 100 EXEMPLAIRES
SUR VÉLIN ALFA DES PAPETERIES CELLUNAF, NUMÉROTÉS
DE 51 A 150. |